前回に引き続き、今回は改訂版執筆を振り返ってみます。

〔改訂〕Trac入門 ~ソフトウェア開発・プロジェクト管理活用ガイド (Software Design plus)
- 作者: 菅野裕,今田忠博,近藤正裕,杉本琢磨
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2013/03/08
- メディア: 大型本
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初版の時の ↓ みたいな内容です。
www.slideshare.net
「Trac 入門」の改定話は2011年の秋ぐらいから頂いてました。当初は2012年の春ごろ出せるといいね! などと言ってました。初版当時は執筆陣がみな自社勤務だったんですが、いまや所属会社や常駐先もバラバラになってしまい、顔を合わせることもめったにありません。そこでパブリックな場所に検証環境が必要だねってことで、さくらインターネットの VPS 借りて CentOS 上に Trac 環境を構築しました。ここまでは順調だったんですが、その後みんな公私共に忙しくなってしまい、ちゃんと取りかかれたのは、当初目標だった 2012 年の春。
私が担当している 2章・3章も 初版では一気に書き上げた気がしますが、2ヶ月ぐらいかかって修正が完了。休日深夜とか早朝しか作業ができず、なかなか進みませんでした。
共同で書いてる 6章(逆引き) も、追加内容を検討し VPS で検証しながら原稿を書いたりしているうちに真夏を迎えました。脱稿は8月下旬。脱稿までに Trac 1.0 が出そうだなあ、出るのかなあとウォッチしていましたが、執筆中は出なくて、9月に入ってからやっとリリースされました。リリース前から CSS とか 画面レイアウトが少々変化してることが分かってたので相当量のスクリーンショット撮り直しが予想されてました。まあ 1.0 対応は校正しながらだね〜ってことで 初校 は10月から開始。
送られてきた初校ゲラを見ると漫画もイラストもパワーアップしてる。いいね! などといいながら、緩やかペースで校正と 1.0 検証が続きます。VPS の Trac をバージョンアップして、プラグインの動作を検証したり、スクリーンショットを撮り直したり・・そういえば、初版が出た時も Trac 0.10 ベースで書いていて校正中に Trac 0.11 がリリースされたためかなり加筆修正で苦労したのでした。Trac 入門は 偶然にも Trac のメジャーバージョンアップと共に世に出ているんです。
検証と修正はなんだかんだで師走までかかり、なんとか年内に初校が終わりました。年明け早々から再校作業開始して2月中旬やっとすべての作業が完了しました。
初版には、開発チームにテスターの「まめぞう君」がいましたが、改訂版ではヘルプデスクのみちこさんに変わっています。これは、初版に女子が登場しなくて残念だったのと、イラストレーターの方がワンカットだけ登場させてくれた女の子が可愛かったから。このため、あちこちに手が入りました。あのズッコケ開発チームも実稼働するソフトウェアを保守しながら開発を続けているようです。
初版ではまえがきの後の扉にワインバーグ先生の言葉を入れてたのですが、改訂版では各章の扉にそれらしい格言を入れたりしてみました。各章に4コママンガを入れよう! って盛り上がったりしたのですが、ネームを考えたりする時間もなくポシャりました。
前の記事にも書きましたが、大規模なプロジェクトで構成管理やリリース管理を担当したりして、私自身、本当に「こんどう」状態になってました。当プロジェクトでは、Jenkins 執事さんも大活躍。いろんな技を覚えました。Git も会社のプロジェクトで使い始めたりと 5年の月日の流れを感じます。
カバーデザインですが、初版は Trac のシンプルな画面をそのままデザインしたような、白に Trac ロゴカラーと同じ赤のタイトル文字(一部で白本とも呼ばれていました)。今回は、Trac のロゴの足跡が一面の雪に点々とついている写真になりました。タイトル文字は青になり、白本のイメージも残しつつ新しさを印象づけています。他にも色々なデザイン案を見せていただき面白かったです。
執筆スタイルも初版の時とはかなり変わった気がします。
初版の時はまず Word で書いて Subversion リポジトリーで管理していましたが、改訂版では、Google Drive に初版のテキスト原稿を突っ込んで Google Docs で編集するスタイルを取りました。ほぼ Word っぽく使えて図も描けたりして Office がなくても Chrome だけで執筆が進みました。
入稿できる感じになった時点で、Google Docs から Word 形式にエクスポートして、Dropbox で共有しました。Google Docs も Dropbox も版管理ができて、Subversion のようにコミットも要らないのが楽でした。
初版の入稿は、最初メールで、校正は紙のやり取りでした。最後の方は、PDF コメントでしたが。今回は画面キャプチャーとWord ファイルを Dropbox の共有フォルダーで入稿し、初校からは PDF ファイルにコメントを入れ、Dropbox の共有フォルダーに置くという流れで作業を進めました。PDF へのコメントは Mac の人はプレビュー、Windows ユーザーは PDF-XChange Viewer を使用。相互運用もほぼ問題なく出来ました(プレビューだと、コメントへの返信ができなくて、プレビューで上書きしたら返信が消えた ということはありましたが)。
PDF は Retina ディスプレイの iPad で GoodReader などを使うと印刷したみたいなクオリティーで読めるので、iPad 片手に、パソコンで PDF にコメント入れるというスタイルでやってみました。GoodReader でもコメント入力できますが、入力はやはりパソコンの方が格段に速いので。初版の時はかなり紙を使いましたが今回はペーパーレス化が出来てよかったです。
オフラインの打ち合わせは技術評論社で集まったのを入れて3回ぐらい、あとは、初版の時と同様 Lingr でコミュニケーションしてました。SNS とかでもよかったんですが、Lingr は専用のルームが作れるし使い慣れてるというのが大きかったです。Lingr も初版が出た1年後ぐらいに一度サービス終了して、また復活してるんですよね。iOS アプリもあるしなにげに便利です。
纏めますと、初版→改訂版で
- ローカルの Office 主体 → ブラウザとクラウドサービス主体
- 郵便・メールで入稿 → ストレージサービスで入稿
- SVN で版管理 → ストレージサービスの履歴で間に合う
- パソコン主体 → パソコン主体だが、スマートフォンやタブレットがサポート
- オフラインますます減少
書きおろしと改訂、単著と共著ではまた違うと思うのですが、時の流れを感じます。
Trac はチーム開発をサポートするツールですが、Trac 入門も遠隔地メンバーによるチーム執筆。いろいろなツールやサービスのお世話になりながらなんとか完了することができました。